2006 J2 第52節 愛媛戦
金曜深夜。日付が変わったころに三ツ沢着。
モツ鍋、カレー、ゴマタマゴ。
ビール、ホッピー、焼酎。
様々な差し入れをみんなで美味しく頂きつつ、優勝のニュースをまとめたDVDを見ながら、ダベる。
深夜、横浜が世界に誇る捨て幕職人が、全選手幕の作成に取り掛かろうとする。
見た人はわかると思うけど、かなりの大作である。念には念を入れて、文字の大きさがわかるように、幕に印を付けておいたほうが良いかも知れない、ということになる。
「メジャーを借りてくるよ」
俺が酔った仲間を家まで送り、そこでメジャーを借りることにする。
しかし2人ともかなり酔っ払っている。千鳥足で、かなり歩みが遅い。
ようやく彼の家にたどり着き、メジャーを受け取り、三ツ沢へ帰ろうとするも、もちろん、道に迷う。
戻ったころには、既に幕の2/3は出来上がっていた。
この期に及んで、遺憾なくダメっぷりを発揮する、俺、万歳。
程なく、捨て幕職人のすべての技とみんなの思いがたっぷりと詰まった全選手幕が完成した。
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明け方から徐々に人が集まりだす。開場待ちの列がどんどん伸び始める。
長い列にワクワクし、そしてほんの少し、ささくれる。
優勝しなくちゃ、来てくれないのかい? そんなことないよな?
この長い列が、単なる優勝のご祝儀ではないことを、静かに願う。
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11:00。幕入れ。
12:00。開場。
13:00ぐらいから、サポーター有志で買い集めた紙テープの配布。バックスタンドで紙テープを配布していた俺は、何度も紙テープを補充しながら、いつの間にかアウェイ側のコーナーフラッグまで来ていた。少し感傷的になる。
14:00少し前。メインもバックも、殆どの人が立ち上がる。選手を迎える拍手が始まる。
数試合前まで、始まってすぐに早くなっていた拍手が、ゆっくりと落ち着いたリズムで続く。
優勝・昇格を決めた安堵、誇り、自信が、拍手に表れていた。
今日は、大丈夫。その時、確信した。
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試合や試合後のセレモニーについては、様々な人が、丁寧に、ありったけの気持ちを込めて書いているので、そちらを確認してください。
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試合後、いつもの店で今日の試合の録画を見ながら少し飲む。
記念撮影のとき、全員が9番のユニフォームを着ていたことを知る。菅野が入場の時青いユニフォームだったのは、そういう理由だったのね。
ヨンデとアレモンのゴールは、何度見ても素晴らしかった。
そして優勝プレートを掲げた城の笑顔に少し驚いた。
もちろんセレモニー中や、最後にゴール裏に来たときも、満面の笑みを湛えていた。とても優しい、素晴らしい笑顔だった。でも俺には、どこかで理性が働いているように見えた。城らしいなぁと思っていた。
しかし優勝プレートを掲げた時の笑顔は、まるで全てから解放されているかのようだった。
こんなに柔和さと力強さに溢れた笑顔というのを、俺は今まで見たことがない。
横浜のユニフォームで、城がその笑顔を見せてくれたことを、俺は強く誇りに思う。
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横浜の2006シーズンは最高の形で終えた。
12/4、Jの理事会においてJ1昇格が承認された。
横浜は、その生い立ちから今まで、たくさんの矛盾を抱え込んできた。
名称、ソシオ、株、応援スタイル。
その矛盾の数だけ、正義がある。
その矛盾の数だけ、サポーターを分割することができる。
わかりにくいと感じる人もいるだろう。わかりにくいことが許せない人もいるだろう。
でも、全部ひっくるめて、それが横浜なのだ。
俺たちは、来年、全ての矛盾、全ての喜怒哀楽を抱えて、胸を張って、J1に行く。
今まで横浜に関わった、全ての方々へ。
おめでとう。そして、ありがとう。
あなたの流した汗は、あなたの流した涙は、あなたの流した血は、決して無駄ではありませんでした。
本当にありがとう。