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2006 J2 第51節 鳥栖戦

「鳥栖で決まるよ」

土曜、俺はうわごとのように家族に何度も語っていた。
勝って昇格が決まる訳ではない。神戸と柏のどちらかがコケなければ決まらない。
神戸の相手は、調子の上がらない湘南。柏の相手は、前節快勝の札幌だけど、日立台でのホーム。
継続的にJ2を見ているサポーターであれば、最終節にもつれ込むと考えるのが普通だろう。
でも、予感があった。
「キレイに昇格を決めることはない」という、ずっとこのチームを見続けている人間独特の自虐的な勘みたいなものが働いていた。

アウェイ、神戸/柏との勝ち点差、何よりキックオフ時間のズレ。

「今日、昇格、あるよ」

電波を撒き散らしながら、鳥栖に乗り込み、仲間たちと合流した。
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このブログに来る人は、中継を見ていた人も多いだろうし、試合内容について細かく書かない。

アレモンのゴールは、ビデオで見ると、DFも追いつくことなく、吸い込まれるようにゴールに入っている。
でも俺には、いつまでたってもボールが落ちてこないように見えた。そしてDFが物凄いスピードでボールに向かっているように見えた。俺の中であのゴールは、時空を越えたスーパーゴールだ。

スタジアムに時計がないため、得点までは時間の進みが早く、得点後は時間の進みが遅く感じた。
1試合分あるかのような3分のロスタイムが過ぎた後、ようやくホイッスルが鳴り響いた。

ここで勝てるのが、今年の横浜。
俺達はJ1に上がる資格が十分にある。
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ダンマクを片付け、選手の出待ちを横目で見ながら、空港へ向かう。
快速に飛び乗ったものの、特急にバシバシ抜かれる。
微妙な金額をケチったことを少し後悔する。

電車の中で、柏と神戸の状況を携帯から確認する。
最初の確認は、前半30分を過ぎ。柏が1点リード。神戸が先制されている。
よし、よし、よし、よし。来たよ、来たよ、来たよ、来たよ。
自分の携帯を見、仲間の携帯を覗き込み、さらに自分の携帯をリロードする。

福岡空港で、先に空港に向かっていた仲間と合流したのは、17:45ぐらい。
柏は札幌に逆転され、神戸は、湘南と同点。
このまま行けば、優勝だ。
何度も何度もリロードする。仲間の携帯を覗き込む。時間の歩みが遅い。

「リロードしても、時間が進まねーんだよ」

思わず呟き、若い仲間に笑われる。

「神戸が1点入れた」

遠くからの声が伝わる。
一瞬テンションが下がるも、昇格がなくなったわけではない。柏はまだ負けている。

「まだかよ」という声が飛ぶ中、数名から歓声があがる。

「柏、負けた」「昇格!」

一帯が声にならない声で満ち溢れる。みんなで硬く手を握り合い、抱き合う。
わずかな時間の後、別の声が響く。

「神戸引き分け」「優勝だ!!」

そしてみんな、ぐちゃぐちゃになった。
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優勝決定後、程なく選手バス到着。
選手達もはしゃいでいる。
一人ずつバスから降りてロビーに向かう。声援が飛ぶ。
最後に城がタラップから降りてきた。手を挙げ何かを叫ぶ。その声は、コールにかき消された。
君は、横浜のサポーターから、恐らく自分が思う以上に圧倒的に愛されている。
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選手が搭乗口に消えたあと、少しずつサポーターの数も減っていった。

俺はわずかな後泊組とささやかに祝杯をあげ、ホテルでスポーツニュースをハシゴした。
バスに中の選手たちの様子や、羽田の状況を見て微笑む。
そして、城の言葉が「ありがとう、横浜」だったことを知る。
思わず、呟く。
ありがとうは、俺達がお前に言う言葉だ、バカ野郎。
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昇格が決まった瞬間、掛け値なしにうれしかった。
みんなと抱き合い、握手をし、涙が出た。

ただ、どっかで冷静だった。

試合終了から時間が経っていたこともあるだろう。
スタジアムではなかったこともあるだろう。
それにより、共に応援した一部の仲間たちと別れざるをを得なかったこともあるだろう。

ふわっとした幸福感に包まれながら、ゴールっぽくないなと感じていた。

「こんなもんなのかな」

完結していない、ゴール。
うれしいんだけど、昇華できない。
どう処理して良いかわからない感情。
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「なんか実感わかねーし、物足りねーなぁ」

後泊組で呑んでいる時、若い仲間に言われる。俺が空港で感じていたことだ。

「そうだね...」

言葉を繋ごうとして一瞬詰まり「ま、ウチらしいじゃん」とお茶を濁す、俺。

「でもさ...」

もう一人の若い友人が言う。

「決まったのが空港で良かったジャン。こっからもっと上に行けってサッカーの神様が言ってんだよ。世界に行けって言ってんだよ」

顔を見合わせて、みんなで、笑う。

「そうだ」「そうだな」


ゴールっぽくなくて良かったジャン。
区切りではあるけど、通過点だよ。
みんなで、スタジアムで、喜びを共有するのは、次の機会に取っておこう。
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シーズンは終わっていない。
残り1試合。勝って、城を送ろう。全ての選手に感謝の気持ちを伝えよう。

2006.12.02
三ツ沢を世界最高のスタジアムにしよう。

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コメント

12月2日は世界で一番幸せなスタジアムだ。
その歓喜の中に足達も入ってほしい。

思うこと、しゃべりたい事山ほどあるんだけど、文才がないのと、気持ちがいっぱいすぎて、うまく言えません。
ただ、横浜を愛して、そして、この瞬間にあの場所に入れたことを幸せに思います。

12/02、今まで以上に選手達の力になれるよう、声つぶします。そして最高の卒業式にしてあげたいです。


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